「現実」と「幸福」
その実感を失った先に、想像を絶する景色が待っている。
「現実」と「幸福」
その実感を失った先に、
想像を絶する景色が待っている。
ゴミ処理施設で働く、二人の男。ラジオからは新元号を告げる官房長官の声が聞こえてくる。次郎の日課は、穴を掘り宝探しをすること。祐一はそんな同僚の姿をただ眺める日々を送っていた。ある日二人は、年老いた母親と一人娘のユキコが同居する団地の一室へ粗大ゴミを回収しに訪れる。孤独を抱えた人々の出会いは、いつしか胸に秘めていた狂気を共鳴させていく——。



多摩美術大学で青山真治監督に師事し、在学中に制作した『残光』(14)はイメージフォーラム・フェスティバル2014 ジャパン・トゥモロウ部門に、続く『ひこうせんより』(15)では第4回なら国際映画祭 NARA-WAVE部門に選出されるなど、国内映画祭でも高い評価を受けてきた広田智大監督。初長編映画となる本作は、2019年3月の撮影から5年もの歳月をかけて完成し、平成と令和の狭間で、現代社会から孤立して生きる人々を描き出す。 ユキコを演じるのは、『王国(あるいはその家について)』(18)や、舞台 城山羊の会などで知られる笠島智。祐一、次郎には学生時代から広田監督作品への出演を重ねてきた山本圭将、福本剛士。さらに主題歌には、寺尾紗穂「柿の歌」が使用されている。 労働、序列、家庭……閉鎖的な構造のなかで生じる摩擦。ショットを重ねるたびに交錯していく「人」や「場」の過去と未来。登場人物それぞれの置かれる異様な状況は、どこかファンタジックでありながらも我々が生きる世界と合わせ鏡のように存在し、痛切な叫び、そして祈りとしてスクリーンに映し出される。


